思い込み
その日、
「一緒にお風呂入ろう!」って言われたんだ。
それで、
え? まじで??? 入る? 狭いで???
イエスかノーか分からんような返事をして、
取り合えず部屋に戻り消灯。
一緒に風呂か…
無理だろ!!!
▼ この続き
下宿は禁煙。
帰宅後に隠れて吸えるのは2本。
1本は風呂場。
もう1本は皆が寝静まった夜中に、窓から。
当然、足りない。できたらもう1本ぐらい吸いたい。
そんな話の中で彼女が
「じゃあ一緒にお風呂入ろうよ」
お風呂は1人30分のルール。
2人で入れば時間の節約にもなるし、
空いた時間でもう1本吸えるやろ?
全く悪びれず、そんなことを言うんだ。
いや下宿とは言え、ただの一軒家だ。
どちらかと言えば普通の家より狭い風呂場、
ここに他人と入るのか…
そこまでして吸いたかねーよ。。。( ノД`)
しかも風呂場で連続2本って
貴重な煙草をそんなもったいない吸い方したくない。
ひとりでのんびり、1本1本を味わって吸いたい。
一方で
先日全員から嫌われていた下宿生が脱走したばかり。
更に奴は脱走中にやらかして少年院。
人から嫌われると、こうなる。
居場所がないということ。
帰る場所、逃げ切る金、仮住まいの下宿、
なにも無い。
そういうことなら
たかがお風呂ぐらいは我慢か…
下宿の人間関係、
誘いを断ると後がややこしいからな…
もし何かあっても
相手は自分と同じ10代の女の子だ、
男なら嫌やが、女やし良いか…
まあ、自分だって女やもんなぁ…(もはや意味不明)
結局、
(ほんまは嫌やけど) 一緒に入るのをオッケーする。
それで次の日、脱衣場でパッと横を見たら
彼女の背中の4分の1が
遠山の金さん
腕に無数の注射痕
えっ? まじで? ( ゚Å゚;) 初めて見たよ
うわぁ、やばい、ホンモノやぁ…
てか、そういうことは先に言えよ!!!!!
その日から
下宿の友達、元◯◯◯で◯◯◯の女
なんでこんなことに…( ;´・ω・`)
ちなみに
彼女から何かされたことは一度も無かった。
むしろ親切。
わたしは彼女が何もしてこないので
こいつ何か裏があるんじゃねーか
かなり粘着して疑いまくったが
この人はどうやら
裏も表もないからこうなったんだな。
裏表が激しかったのは、むしろ自分自身のほう。
こうするしかないと思っていた。
お金がない、力がない、根性も度胸もない、
下宿での生き残りの武器が「◯◯ちゃんのお友達」
「わたし、この中で一番ヤバそうな
◯◯ちゃんと仲良しですよ」
こういうアホなポジションだけ取り合えず確保。
これは後々、自分自身が
それなりの企業に就職してびっくりした。
お金がある、家がある、家族がいる、
努力すれば報われる、
自分が明日も生きていると知っている、
そういう「普通の人たち」が
大きな会社にいて
実はわたしと同じようなことで悩んでいる。
居場所がない
誰からも理解されない
頑張って努力して成果をあげて
ますますそこから降りられなくなる
嫌いな上司の指示に従う
思い通りに動かない部下の機嫌を伺う
同期の派閥
持ち物、結婚、旦那の勤め先、持ち家、出身、
色んな格付け
悩みなんて何もなさそうな「普通の人たち」が
実は自分と大差ない。
むしろ自分自身が「普通の人たち」だったのか
ああ、わたしも普通の人で
自分だって、ただの凡人だったのか
そういう当たり前の事実に気づいたのは
もうずっと後のこと。
うーん、アホやった。
わたしって策士!
賢く生き残るぜ!と思っていた10代、
後々になって振り返ると
この10代が一番アホな時期やったという。